わびさびつくひび。

ことば、おと、しょく、たびなど。

シャッター音が聞こえるとき。

カメラは全く詳しくなく、撮影技術も持ち合わせていない僕は、いつもiPhoneでカシャカシャ言わせながら撮っている。家族写真も滅多に撮らず、自撮りなんてもってのほかだから、必然的に被写体は、飲食物や風景に限られる。僕にとっての写真は、思い出というより記録みたいな意味合いになるんだと思う。

f:id:ezowatton:20190922154031j:image

そんな僕でも、先日コピーの先生が出してくれた「ミラーレス一眼カメラで撮りたくなる」コピーの課題では、珍しく褒められた。カメラ好きや詳しい人の方が切り口が狭くなってしまう傾向もあって、明るくない分野のほうがコピーは書きやすくなるのかもしれない。褒められたコピーはいくつかあったけれども、中でも僕自身がお気に入りなのは、

「夜空を撮ったら、宇宙が写った。」

さて、僕は一緒にいる人が、旅先やレストランでカメラやスマホを取り出し、写真を撮る瞬間が好きだ。そこが、僕自身が選んだ場所だったりすると、ホントにしあわせな気持ちになる。その写真をシェアしたかどうかは問題ではなく、その瞬間をおさめようと行動したことに喜びを感じるのだ。カシャっという音がうるさいときもあるけれど、心が動く音なのかもしれない。

追いつけ、追いこせ。

歳をとると代謝が悪くなるから、太るというけれど、太りにくい体質と決めつけていた僕の身体も(というかお腹だけど)ここのところ随分と目立つようになってきた。これはマズイぞ、と徒歩通勤や休日の散歩で少しでも前の自分を取り戻そうとあがいている。昨日はちょっと頑張ってアップダウンのあるルートを10kmほどウォーキング。

大倉山ジャンプ場から一望できる札幌はとても美しい。スキージャンパーもこの風景を眺めながら飛んでいるのかもしれないけど、あの滑走路をジャンプ台まで滑り降り、そして大きくジャンプし、ギリギリまで飛んで着地するというのは、北国生まれの僕にとっても、それは超人でもあり、鳥人のようにみえる。

f:id:ezowatton:20190916205328j:image

大倉山から下りの道をてくてく歩いていると、反対方向から、あるお母さんが登り坂をスーッと自転車で上がってくる。軽くこいでるのにスーッと登ってくる感じにえっ!と思ったけど、電動アシスト自転車だった。すると、その50mくらい後ろを小学生の男の子が自転車を押しながら、そのお母さんに追いつこうと頑張っている。お母さんは、遅いわねぇ、というちょっと不機嫌な表情をして途中で止まって待っていた。まだしばらく登り坂は続くので、あと何度か同じようにお母さんはスーッと登り、息子は自転車を汗をかきながら押し、遅いわねぇ、という表情で待つのが繰り返されることを考えると、ちょっとだけその男の子に同情したくなった。もう少し大きくなったら、きっと自力でこいで登れるようになって、母さん遅いぞと、前で待つ姿を想像しながら、僕はゆっくりと坂を下ったのでした。

子供が親を追い越すのは、楽しみな気もするし、少し寂しい気もするかもと、中学生の息子を持つ父は思うのです。

老け顔。

最近流行ってる老け顔になるアプリ、僕もやってみた。予想をはるかに超えるおじいちゃん顔で、長寿番付にもでてきそうなくらい、シワは深く、頭もヒゲも真っ白。カメラからみても、かなりの老け顔であることは間違いない。

先日、70代の会社の大先輩を筆頭に、他は60代の会社OBの方々と一緒に飲む機会に恵まれた。そのときの会話。

60代の先輩「お子さんいくつになった?」

僕「もう中学生です」

70代の大先輩「ずいぶん若い時、だね〜」

僕「30半ばのときなので早くないですよ」

70代の大先輩「ごめん、孫かと思った」

僕「...」

そのあとは、自身の中3の孫の自慢話に変わっていったのでした。

アプリも目も、真実をとらえているのだ。f:id:ezowatton:20190908092549j:image

マナーから学ぶ。

この春から通勤場所が変わり、これまでとは違う路線のバスに乗っている。なるべく座れるようにと始発のバス停から乗ったり、乗り換え時間が少なく済むように家を出る時間を工夫しながら、最適なダイヤを見つけてきた。あたりまえだけど、同じ時間でも車両は毎日違っていて、古いのもあれば、新車の匂いが残るものもある。

ある日のこと。前の座席の背に貼ってある注意事項。

「安全のため停止後扉が開くまで、移動しないようにお願いします。」

と書いてあるシールが少しはがれ、その前のメッセージがちらっと見えた。

「安全のためバスが停止するまで、移動しないようにお願いします。」

結局、言いたいのは、バスは急停止するかもしれないので、すっごく気をつけてね、ってことですよね。もともとのメッセージも、シールを貼ってまで修正したメッセージも目的はかわらないけど、転倒して怪我をしても、バス会社的には責任をとらなくて済むっていうリスクヘッジなんだよね。本当に伝えなくてはいけないことをちゃんと事前に注意したから、こっちに責任はありません的なメッセージって世の中にはよくあるなぁ。会社でもコンプライアンスを声高に叫ぶときも、おんなじことが起きてるかもしれない。会社は注意喚起してますよ、みたいな。

その点、コピーライター岡本欣也さんのタバコのマナーのキャッチコピーは、具体的かつ自分ごととして、とらえられる傑作だ。

f:id:ezowatton:20190906223748j:image

マナーをつたえるには、ユーザーのストーリーに落とし込むのが大事なんだよな、と思う。

嵐のあとに。

台風は、性格の穏やかな温帯低気圧にかわり、ツメ跡も残さず、暑さだけを残し、いなくなった。夏を置き忘れたクローサ一家のおかげでもうすこし夏を楽しめそうだ。

嵐の前の静けさ、とか嵐の後の静けさ、とか言うけど、この慣用句をもじったこのコピーが好きだ。

「チラシのあとの、静けさ。」

f:id:ezowatton:20190817182149j:image

2001年TCC新人賞に輝いた、九州の折り込みチラシ製作会社の広告(コピーライター:國武秀典さん)。よく聞くフレームを使ったコピーはよく効く。見つけた時は、してやったり!だったんだろうな。グラフィックもいい。売り切れた商品が10円のセロリという普通バカ売れしないものをあえてチョイスしてるところもユーモアがあるとなぁ思う。

うまくて悔しいから、このフレームでほかになんかないかな、と考えてみた。

おもらしのあとの、静けさ。

赤ちゃんの紙おむつのコピーに使えないかな、なんて。でも本家にはかなわないですね。

台風一家。

台風10号が北海道に近づいている。その名をクローサ。名前からして接近前提でイヤだなと思っていたら、鶴を意味するカンボジア語らしい。台風の名前って14ヶ国が加盟する委員会で決められるローテーションどおりに命名されてるんですね。ちなみに日本は、台風14号が来ちゃったらカジキという名前になり、以降は14番目おきにカンムリ、クジラ、コグマ、コンパス、トカゲ、ヤマネコ、コイヌ、ヤギ、ウサギときて、またカジキに戻る。なんとも不思議な名前だな、と思ったら日本は星座から名前をとっているよう。

被害はライジングサン初日中止だけにとどめて、過ぎてほしいけれど、子供のころ、台風一過を台風一家だと思っていた僕からすると、台風ファミリーは、夏を養子にとりながら、どんどん北上していく気がするなぁ。「ナイフで切ったように夏が終わる。」という80年代のパルコの有名なコピーのように、特に北海道の夏はその境目がはっきりわかるくらい潔く終わってしまうし。

夏はダラダラ続いてほしいと思いたいけど、限りがあるから、

「ずっと」なんてないことを、こどもたちは夏から教わる。

というコピーが刺さるんだよなと思う。でも、夏よ、もうちょっとだけ、ここにいておくれ。(なつぞらウッチャンのナレーションっぽく)

f:id:ezowatton:20190816231210j:image

北から南へ。

地元、コンサドーレ札幌を盛り上げてくれた小野伸二選手が札幌を離れ、沖縄の地に旅立った。J2からJ1への昇格やJ1での踏ん張りに大きく貢献したのは言うまでもない。

https://www.consadole-sapporo.jp/news/20190854079/

2001年、僕がオランダに住みはじめ、まもなくして小野選手は、浦和からロッテルダムを本拠地とするフェイエノールトへ移籍。翌年の日韓ワールドカップを日本でみられず悶々とした気持ちで渡蘭した僕にとって、それはそれは、うれしいニュースだった。オランダに住む仲間が増えた、と勝手に思っていたし、何より周りから大きな期待をかけられたチャレンジャーとして、日本からやってきた姿に勇気づけられていた。

小野選手はフェイエノールトの中心選手として大活躍。そんな時期のカローラフィールダーのテレビCMは、僕の好きなCMのひとつだ。小野選手と女の子のオランダ語でのやりとりが微笑ましい。使い慣れてない言葉だけど、これがエモいって感じなのかな。このシリーズ、2003年のTCCグランプリ、2004年TCC賞とコピーライター業界で高い評価を得た広告でもある。

f:id:ezowatton:20190816210914j:image

小野選手は、2006年までオランダで活躍、浦和→ボーフム(ドイツ)→清水→シドニーを経て、2014年に札幌へ。沖縄への移籍も21世紀のはじまりに世に出たカローラの有名なコピー、「変われるって、ドキドキ。」みたいな気持ちで決めたのかもしれない。(令和の新時代にも符合する普遍的なコピーだ)

小野選手、札幌を盛り上げてくれ、ありがとうございました。