第57回宣伝会議賞を予想してみた。
先日、国内最大のキャッチコピーのコンテスト、宣伝会議賞の発表があった。
といっても、グランプリなど栄誉ある賞は3月17日に発表なので、今日時点では、その候補となるファイナリスト31点が発表されている状況。(うち、キャッチコピーは29点)
僕はというと、前回は全て落選したんだけど、今回は一次通過が3点、二次通過が1点と小さな大躍進でした。ファイナリストの中から、気になったコピーをチョイスし、各賞を予想してみます。
🏆グランプリ(賞金100万円)
履き慣れた靴は、買えない。
(セメダイン・シューズドクターN)
【選定理由】
真理をつくコピーは、「確かにそうだ」と納得させる力があって強い。服、帽子、眼鏡など身に付けるものの中で靴ほど使ってくうちに馴染むモノはない。靴を買い換えるんじゃなく、シューズドクターNで修理する価値を、嫌味なく、さらっと気づかせてくれるコピーだな、と思う。
🥇コピーゴールド
社員全員、グビ。
(サントリー・クラフトボス)
【選定理由】
これは、瞬発力のあるいいコピー。伝わる速度は早いに越したことはない。「クビ」というネガティブワードを「グビ」と濁点をつけるだけで一気にポジティブに変わる。オセロのようにブラック企業がホワイト企業にひっくり返るよう。単なるダジャレ系コピーではなく、クラフトボスの商品価値にもしっかりと落ちてるところが秀逸。
🎖真木準賞
IアイLラブCちんぷんかんぷん
(先端加速器科学技術推進協議会・国際リニアコライダー)
【選定理由】
この課題にまさかこんなコピーを書ける人がいて、それを選ベル審査員がいるなんて、ファイナリストの中で一番の驚きだった。僕の技量や発想ではこのコピーは絶対書けないなぁ。特徴的なのは、文字の並べ方。たぶん僕だったらILC(アイラブちんぷんかんぷん)としちゃうかもしれない。そんなことより、国際リニアコライダー(ILC)について誰もが初耳で、たとえわかりやすく説明してもらっても口をポカンと開けてしまいそうな感じをポジティブに「ちんぷんかんぷん」という言葉を持ってきたところは、かなりレベルが高いなと思う。
🥈コピーシルバー
なるべく早く、部長と別れるルートを調べた。
(ジョルダン・乗り換え案内)
【選定理由】
今回のファイナリストで一番お気に入りのコピー。サラリーマンには特に共感できるコピーだなぁ。「部長」を登場させるのは割とコピーの王道になっていて、課長じゃ身近すぎるし、社長や常務じゃ遠すぎる。ちょっと残念な立ち位置の「部長」が効く。仕事や飲み会の帰りくらいは会社づきあいから解放してほしいというインサイトをしっかり刺激していて、これを解決するのが乗り換え案内ですと美しくサービスに落ちているのが素晴らしいと思う。また、映像もしっかりと眼に浮かぶコピーです。
AIに取られたい仕事もある。
【選定理由】
what to sayは、無駄な仕事や作業はこのストレージを使えば取り除くことができる、ってことだから、僕もこの切り口でコピーを書いた。たしか、仕事人間から仕事を奪え、みたいな感じだったかな。このコピーを見たとき、わかりやすくて、そうそうこういうこと言いたかったんだよなぁと感心したコピーです。
冷蔵庫のエクレアに、姉が貼ってある。
(キヤノン・iNSPIC PV-123)
【選定理由】
このコピーは提案型なんだけど、上から目線で説教じみてなく、ユーモアがあってチャーミングだ。言葉のチョイスも絶妙。高級でもなく、B級でもない「エクレア」もさることながら、コピーに登場させる家族の一員の中で最もパワーを発揮する「姉」がよい。ダイエット中とか言いながら甘いもの食べちゃうのは、やっぱり姉っぽいですよね(姉がいないから、よくわからんけど)
以上が予想だけど、どのコピーが受賞するかワクワクするなぁ。
Say goodbye to Holland.
オランダは僕がちゃんと居を構えて住んだことのある唯一の外国だから、勝手に第二の母国と呼んでいる。僕は、英語でオランダを迷わずthe Netherlandsと言う。Hollandでも通じるだろうけど、Polandに聞こえちゃいそうなくらい発音があまりよくないのもあるし、正式な国名は低地を意味するNederland(ネーデルラント)だし、だいたいみんなそう言うのを真似したのもある。
ある記事によると、今月からオランダでは、Holland表記をやめているらしい。Hollandは首都アムステルダム、政治の中心ハーグ、物流の中心ロッテルダムといった主要三都市がある州名(北ホラント州と南ホラント州)に由来する俗称であり、観光インバウンドが過剰になる「オーバーツーリズム」の解決策のひとつとして、旅先がこれらに偏らないようHollandと呼ぶのをやめるようだ。これで観光客が分散・平準化されるか効果はよくわからないけど、新たにロゴまでつくってキャンペーンを行なっている。
上が旧、下が新。
日本語は、オランダのままがいいな。
笑いのおひたし。
引用 レシピ大百科
報連相が大事だと、耳がタコとほうれん草の和えものになるくらいよく聞くし、それを部下にも求めているわけですが、報連相に対しては、「おひたし」で接するのも大事だと、最近知った。
お: 怒らない
ひ: 否定しない
た: 助ける
し: 指示する
感情的になって怒鳴ったり、新人じゃないんだからとか本当に大学出てるのか、と言い放ったり、いっぱいっぱいになってるのを、見て見ぬ振りしたり、期日とか目的とか品質をあいまいにしたまま、仕事を振ったり、そんな上司や同僚の言動は、パワハラにつながってしまう可能性があるっちゅうことだ。
昨年のM-1グランプリで決勝進出したミルクボーイもぺこぱも、そんなおひたしが必要な現代の人間関係をボケとツッコミの関係でうまく表しているなと、思った。
ぺこぱのボケ担当のつかみどころのないボケをツッコミ担当が感情をトーンダウンさせながら、最後は肯定してしまうツッコミは、おひたしの「お(怒らない)」と「ひ(否定しない)」にあたる。
ミルクボーイのボケ担当のおかんが忘れてしまった朝ごはんの名前をツッコミ担当が親身に思い出すよう手を差し伸べるのは、おひたしの「た(助ける)」、コンフレークかそうでないか、行ったり来たりする中でしっかりとその理由を伝えるのは、おひたしの「し(指示する)」にあたる。
世の中の流れを広告が代弁することは多々あるけど、お笑いネタやスタイルも世相を表すんだね。
ひとりクリ。
平日だった今年のクリスマスは、さぁーっと過ぎ去ってしまった感じ。サンタ役を卒業したのもあるかもしれないけど、毎年楽しみにしている明石家サンタに八木亜希子さんが体調不良で出演できなかったのもクリスマスが消化不良気味になってしまった理由かもしれない。
きっと君は来ないひとりきりのクリスマスを、最近は「クリぼっち」って言うんですね。孤独を少しだけやわらげる言い方だなぁとは思う。むかしは「シングルベル」とか、うまいことを言ってた気がするけど。
「ひとりぼっち」は、孤独感満タンだけど、これに対して「ひとりきり」は、誰にも邪魔されたくないという強い意思が感じられる。
ひとりきり、になりたかった。
ひとりぼっち、にはなりたくなかった。
このレコチョクのコピー(2012年)は、音楽の没入感をうまく対句で表している。
じゃあ、クリスマスも、「ひとりクリ」なら、ひとりでもいいのかな。いや、やっぱ寂しいよね。
刷り込みの威力。
「アボカド」を間違って「アボガド」と言ってしまうのは、化学で暗記させられた「アボガドロの法則」のせいだと思う。
ボウリングの「ガター」を間違って「ガーター」と言ってしまうのは、実践ではお目にかからない「ガーターベルト」の幻のせいだと思う。
ニューヨークタイムズの記事によると、13〜14歳頃の思春期によく聞いていた曲が大人になっても一番影響を与えるらしいです。
刷り込みって、相当な威力があるのだ。
最後まで気を抜かない。
先日、MLBのワールドシリーズで優勝したワシントン・ナショナルズのシャーザー投手の奥さんのツイートを見ていたら、wifeyって書いてあってミッフィーみたいに可愛い響きだなとちょっと思った。wifeを基準にすると、複数形のwivesは、とてもこわい印象。dance with wivesだと複数の奥さんとの社交ダンスというより、なんか襲われそうな気もする。
語尾って冗舌だなぁと思う。方言だって語尾が特徴的だったりするし、語尾でフォーマルになったりカジュアルになったりする。とくに日本語は語尾でやっと肯定と否定かわかるからややこしい。
コピーでも、「〜だ」、「〜です」と言い切るのと「〜だと思う」、「〜かもしれない」、「〜だったりする」では、まったく印象や届き方が異なる。
僕は、早さと強さがあって、言い切り型になるような言葉を探したいと思っているけれど、「思う」コピーの代表作は、岩崎俊一さんと岡本欣也さんの日本郵政の広告(2008年 TCC賞受賞)
「年賀状は、贈り物だと思う。」
ですね。
年賀状を書くのは面倒だし、こんな風習やめちゃいたいっていう本音が送る側にはある一方、受ける側に立つと、もらったらうれしいし、来なくなったら気になるっていう心理から「年賀状を一年でいちばんはじめに届けられるプレゼント」と定義することで、書き手の背中を押す。携帯で「あけおめ」や「ことよろ」メールを送れば新年の挨拶って十分じゃねぇって感じになってきた時代においては、断定ではなく、ちょっとだけ控えめに「思う」でしめくくる方がハッとさせる効果がありますね。
語尾の果たす役割はデカいのだ。
歩く。
20年近く前、海外駐在前に英語を上達しようとがんばっていたけれど、なかなか結果が出なく、壁にぶつかってる僕に、語学堪能な入社2年目くらいの後輩が「語学って必ず踊り場があるんですよ。上達しないような期間がある一定期間あって、また階段を上がるように上達しますよ。」とアドバイスしてくれた。たしかに、右肩上がりでずっと上達とか成長するほど甘くはないけど、実際に、日本を出る頃には踊り場から一歩踏み出し、まあなんとか現地で使えるくらいにはなっていたのでした。今ではすっかりふりだしに戻った感じではあるけれど。
最近の僕は、よく歩くようになった。昨年より遠くなった職場への通勤も、チャリや車で出かけていた場所も、ゆるい目標をたてながら、歩くことで目的を達成している。雨降りとか疲れ気味の時は、無理はしないんだけど。
ランニングは、急いでいるとか、タイムを競うとか、速さを目標にしがちだ。下手したらケガしちゃうかもしれないし。チャリは機動力バツグンだけど音楽を聴いちゃダメとか交通ルールが厳しく、そこそこスピードも出るから周りの風景をみる余裕はなかったりする。一方、歩くことは道具もいらない無理のない自然な動きであり、音楽を聞いたり、考えごとしたり、遠回りしたり、新たな発見があったり、ながらや副産物もある。
このコピーのように、歩くって、ちょっと立ち止まることも前提になっているところがいいなと思う。さて一歩一歩、行きますか。